@疑問氷解★【Q&A】

このコーナーでは磁気センサー製品に関する素朴な疑問から、今抱えているお悩みまで、実際にお客様から頂いた「生の声」に【Q&A形式】でズバッとお答えいたします。

今回はモータメーカーのエンジニアの方から、ご質問をいただきました。

ご質問

モータメーカーのエンジニアです。

モータに取り付ける小型エンコーダーを調査しています。 多極磁石(10極程度)の磁界を半導体磁気抵抗素子で検出して、10~12ビットのエンコーダーは実現できるでしょうか?

その場合、どのセンサを使えばいいでしょうか?

回答

お問い合わせありがとうございます。

半導体磁気抵抗素子(SMRE)は、磁束密度の変化に応じて抵抗値が変化する素子で、産業機器用途の高精度エンコーダーに使われています。

一般的な使い方は、回転軸に歯車を取り付けてSMREの背部にバイアス磁石を置くと、歯車の”山”と”谷”に応じてSMREから正弦波状の信号が得られますので、この信号を信号処理してエンコーダーとしています。 最近は、歯車の代わりに、光エンコーダのような、磁性体で出来たスリットディスクを用いて、小型・薄型の磁気式エンコーダが実現できるようにもなってきました。

さて、SMREの抵抗値の変化率は、磁束密度は高いほど大きくなるので十分な信号出力を得るために、通常は400~500mT(ミリテスラ)程度の磁束密度を印加できる強力なバイアス磁石が使われています。

しかし、半導体磁気抵抗素子は、磁束密度の絶対値に関わらず、磁束密度の変化さえあれば抵抗値が変化しますので、多極着磁磁石でも何らかの出力が得られる可能性があります。

そこで、歯車を使用するエンコーダーと同等の磁束密度変化を多極着磁磁石で実現した場合の出力について計算してみました 。

まず、歯車のサイズやセンサと歯車とのギャップによっても異なりますが、歯車の“山”と“谷”では、100mT程度の磁束密度差があります。

そこで、400mTと500mTの時のSMREの抵抗値を調べると、それぞれ、1.7389kΩと2.2399kΩになります。このことから、半導体磁気抵抗素子への印加電圧を5Vとすると、

となり、314mVの出力振幅が得られます。

多極着磁の磁石が作る磁束密度も、磁石サイズや磁石とセンサの距離によって異なりますが、100mTの磁束密度が得られたとすると、0mT及び100mTの時の抵抗値はそれぞれ、0.6067kΩと0.6952kΩとなります。

同様に、半導体磁気抵抗素子への印加電圧を5Vとして、出力振幅を計算すると、

となり、約170mVの出力振幅が得られます。

このことから、多極着磁磁石を用いても、半導体磁気抵抗素子からは”それなり”の出力振幅が得られることが分かります。

しかしながら、センサ用ギアの加工精度に比べて、多極着磁磁石の着磁精度は劣りますので歯車を使うエンコーダーと同等の精度や分解能は期待できないと考えられます。したがって、エンコーダーとしての性能やコストなどの面から、SMREを使う方が良いのかどうかを決めていただければと思います。

なお、磁石の着磁ピッチと磁気抵抗素子のピッチについては、磁石のN極あるいはS極の一つの磁極幅の中で、磁力最大になる位置と磁力最小になる位置にそれぞれ磁気抵抗素子のピッチが合うように配置しなければなりません。

歯車の時は、歯車の“山谷”に一致するように、磁気抵抗素子のピッチを合わせますが、この考え方と同じように、磁石のN/S極のピッチと磁気抵抗素子のピッチを合わせてしまうと、磁気抵抗素子には逆相で同じ磁束密度の磁力が印加されることになり、抵抗変化率がいつも同じになってしまいますので、磁石の回転により磁力が変化しても、SMREの出力振幅はいつも0Vとなってしまいます。

多極磁石を使う場合は、単極内の磁力が最大になるところ(磁力のピーク)と最小になるところ(磁極の境目にあたる零磁場のところ)の距離と、磁気抵抗素子のピッチを合わせることが必要です。

ちなみに、12ビット程度の分解能のエンコーダーであれば、AK7405などの回転角センサICなどを使えばセンサICと2極着磁の円板型磁石だけで簡単に実現できますので、こちらを検討されることを推奨します。

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